「アドミッション・ポリシーを読んでから志望理由書を書きましょう」とはよく言われるが、実際に読んでも「求める学生像」「主体性を持って学ぶ意欲」といった言葉が並ぶだけで、どう使えばいいか分からないという相談をよく受ける。
この記事では、アドミッション・ポリシー(AP)とは何か、どこで確認できるかを整理したうえで、APに頻出する抽象語を分解する方法と、自分の経験と接続するための3ステップのワークを紹介する。志望理由書全体の構成や評価軸は 志望理由書の書き方|総合型・推薦で通る800字の構成と例文 にまとめているので、あわせて読んでほしい。
アドミッション・ポリシー(AP)とは何か
アドミッション・ポリシーとは、大学・学部がどんな学生を求めているかを示した公式な方針のことだ。日本の大学は、学校教育法施行規則の改正により、次の3つの方針(三つのポリシー)を策定し公表することが求められている。
| 方針 | 内容 |
|---|---|
| ディプロマ・ポリシー | 卒業までにどんな力を身につけさせるか(卒業認定の方針) |
| カリキュラム・ポリシー | その力をどんな教育課程で育てるか(教育課程編成の方針) |
| アドミッション・ポリシー | どんな学生を入学させたいか(入学者受け入れの方針) |
3つの方針は本来、互いに整合しているべきものとして設計されている。つまりAPは単独の文章ではなく、「この大学が育てたい人物像(ディプロマ・ポリシー)」から逆算して「入学時点でどんな資質を持っていてほしいか」を書いたものだ。この構造を理解しておくと、AP単体を読むよりも、その大学がどんな教育を目指しているかまで含めて読めるようになる。
APに書かれている内容は、大学によって粒度や具体性に差がある。学力の3要素(知識・技能/思考力・判断力・表現力/主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度)に沿って書かれているものが多いが、学部の専門性に応じた独自の記述を加えている大学も少なくない。
APはどこで確認できるか
APは基本的にすべての大学が公表しているが、掲載場所は大学によって異なる。
- 大学公式サイトの「入試情報」「アドミッションポリシー」ページ
- 学部・学科ごとの個別ページ(全学共通のAPと学部別APの両方がある大学が多い)
- 学生募集要項の冒頭部分
- 大学によっては大学案内(パンフレット)にも要約版が掲載されている
総合型選抜・学校推薦型選抜を検討している場合は、全学共通のAPだけでなく、必ず志望する学部・学科別のAPまで確認する。全学共通のAPは抽象度が高く、学部別のAPのほうが専門性に沿った具体的な記述になっていることが多い。
AP・募集要項の内容は年度ごとに見直されることがある。志望理由書に使う前に、必ず受験年度の大学公式サイト・最新の学生募集要項で確認してほしい。 この記事で示す内容はAPの一般的な読み方・構造の解説であり、特定の大学の最新の公表内容を保証するものではない。
APに頻出する抽象語とその分解法
APには、次のような抽象語が高い頻度で登場する。これらは大学側の意図を圧縮した表現であり、そのままでは志望理由書に使いにくい。分解のための問いを添えて整理する。
| 頻出する抽象語 | 分解の問い | 自分の経験での言い換え例 |
|---|---|---|
| 主体性を持って学ぶ意欲 | 誰かに指示される前に、自分で動いた場面はあるか | 授業外で自主的に調べた・活動を始めた具体的な経験 |
| 多様な人々と協働する力 | 意見が違う相手とどう折り合いをつけたか | 部活・委員会・グループ課題での対立と調整の経験 |
| 幅広い教養・基礎学力 | 専門以外の分野にどう関心を広げてきたか | 授業外で読んだ本・関心を持った他分野の話題 |
| 課題発見・解決能力 | 「問題だ」と自分で気づいた場面はどこか | 誰かに指摘される前に違和感を持った具体的な場面 |
| 社会に貢献する意欲 | 貢献したい対象は誰で、どんな形の貢献か | 抽象的な「社会」ではなく具体的な人・地域・課題 |
分解の問いに答えていくと、抽象語がそのまま自分の言葉に変換される。志望理由書の中で抽象語を使うときは、必ずこの表の右列のような具体的な経験とセットで書くことが重要になる。抽象語だけで終わる書き方がなぜ評価を下げるのかは 志望理由書のNG例10選|落ちる書き方と直し方 で詳しく解説している。
ステップ1|APを3つの要素に分解する
志望校のAPを読んだら、まず文章全体を3つの要素に分けてみる。
- 学力・知識の要素(例:基礎学力、特定分野の知識、語学力など)
- 思考・行動の要素(例:課題発見力、論理的思考、実践力など)
- 姿勢・態度の要素(例:主体性、協働性、社会への関心など)
長いAPの文章を一度にすべて使おうとすると、志望理由書が総花的になり、結局どれも浅くなる。まずは3要素に分解し、自分の体験と特に強く結びつく要素を1〜2個選ぶところから始める。
ステップ2|自分の経験を要素ごとに棚卸しする
3つの要素を選んだら、それぞれに対応する自分の経験を書き出す。このとき、部活動・生徒会・ボランティア・学校の授業・家庭での出来事など、思いつく限り箇条書きで洗い出すとよい。
- その要素に関連する経験を、思いつく限りすべて書き出す
- 実績の大小ではなく、「その経験からどう考えたか」を意識してメモする
- 1つの経験について「見たこと・したこと」と「感じたこと・考えたこと」を分けて書く
このステップでは、経験の数を絞り込む必要はない。次のステップで絞り込むための材料集めだと考えてほしい。オープンキャンパスでの一次体験を材料として集める方法は オープンキャンパスは「志望理由書の材料集め」で行く にまとめている。
ステップ3|要素と経験を接続する一文を作る
最後に、選んだAPの要素と、棚卸しした経験の中から最も強く結びつくものを選び、1文にまとめる。型は次のようになる。
「〇〇(AP上の要素)が求められている貴学に対し、私は△△(自分の経験)を通じて□□という力・関心を身につけてきた。」
たとえば、APに「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」とある場合、次のように接続できる。
「主体性を持って多様な人々と協働することを重視する貴学に対し、私は文化祭実行委員として意見の異なるクラスをまとめた経験を通じて、対立を前提にした合意形成の力を身につけてきた。」
この一文ができれば、志望理由書の「大学で学びたいこと」の段落の核はほぼ完成している。あとは、この一文を過去のエピソード・現在の関心とつなげて肉付けしていけば、必然性のある志望理由書に近づく。時間軸に沿った全体の構成テンプレは 志望理由書の書き方 を参照してほしい。
APを引用するときの注意点
APを志望理由書に取り込む際は、次の点に注意する。
- APの文章をそのまま長く引用しない。要約したうえで、自分の言葉で言い換える
- 「貴学のアドミッション・ポリシーには〇〇と書かれています」という説明だけで終わらせない。必ず自分の経験と接続する
- 学部・学科別のAPと全学共通のAPを混同しない。志望する学部・学科のAPを優先して読む
- APは年度によって見直されることがあるため、出願年度の最新版を大学公式サイト・学生募集要項で必ず確認する
APを丁寧に読み込んだことは、面接でも強みになる。「なぜこの大学なのか」を聞かれたとき、AP上の言葉を借りるのではなく、自分の言葉に変換した状態で語れるようになるからだ。総合型選抜の面接で聞かれる質問の全体像は AO・総合型の面接対策|頻出質問20と志望理由書との一貫性 にまとめている。
書き上げた志望理由書が、APの要素とどれだけ具体的に結びついているかを客観的に確認したいときは、lonovaの 志望理由書のAI添削 が使える。無料登録すれば、大学適合・具体性・将来像などの観点でスコアと改善点が返ってくる。まだAPを読み込んだ段階でエピソードが定まっていない場合は、チャットで壁打ちしながら整理できる 志望理由書コーチ(サブスク限定)も選択肢になる。
よくある質問
アドミッション・ポリシーはすべての大学が公表していますか
すべての大学が、ディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシー、アドミッション・ポリシーの3方針を策定・公表することが求められている。ただし掲載場所や記述の具体性は大学によって差があるため、志望校のサイトで実際に確認してほしい。
全学共通のAPと学部別のAPはどちらを重視すればいいですか
総合型選抜・学校推薦型選抜では、志望する学部・学科別のAPを優先して読むほうがよい。全学共通のAPは抽象度が高く、学部固有の専門性を反映していないことが多い。
APに書かれている言葉をそのまま志望理由書に使ってはいけませんか
短い引用や要約であれば問題になりにくいが、長文をそのまま引き写すのは避けたほうがよい。重要なのはAPの言葉を借りることではなく、その内容を自分の経験と結びつけて語れることだ。
APを読んでも自分の経験と結びつかない場合はどうすればいいですか
無理に1つの経験に絞ろうとせず、ステップ2の棚卸しに戻って経験の書き出しを増やしてみるとよい。小さな経験でも「見たこと・したこと」と「感じたこと・考えたこと」を分けて書くと、意外な接続点が見つかることがある。
まとめ
この記事の要点を整理する。
- APはディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシーと連動した「入学者に求める資質」の公式な方針
- 学部・学科別のAPを優先して確認し、必ず最新の大学公式サイト・学生募集要項で内容を確かめる
- APの抽象語は「分解の問い」を使って自分の経験に言い換える
- ステップ1(3要素に分解)→ステップ2(経験の棚卸し)→ステップ3(要素と経験の接続文を作る)の順で進めると、必然性のある一文が作れる
APは読むだけで終わらせず、自分の経験と接続するところまでやって初めて志望理由書の材料になる。書き上げたら、提出前に客観的な目で確認しておこう。


