「志望理由書の例文を見て、書き方のイメージを掴みたい」という相談は、lonova編集部にも毎年多く寄せられる。例文を見ること自体は悪くない。問題は、例文をどう使うかだ。
この記事では、経済・法・理工・看護医療・教育の5つの学部系統について、400字前後の構成骨子例を掲載する。あわせて、それぞれの「良い点」がどこにあるかを解説し、記事の後半では例文を丸写しすると大学側にどう見抜かれるのかを具体的に説明する。全体の構成や評価される3軸(一貫性・必然性・学問への接続)の詳しい解説は 志望理由書の書き方|総合型・推薦で通る800字の構成と例文 にまとめているので、あわせて読んでほしい。
志望理由書の例文をどう使うか
例文の正しい使い方は「構成の型を学ぶ」ことであって、「文章を借りる」ことではない。この2つを混同すると、丸写しに近い志望理由書が出来上がってしまう。
例文から学ぶべきものと、そのまま使ってはいけないものを整理する。
| 学ぶべきもの | 使ってはいけないもの |
|---|---|
| 過去・現在・未来の時間軸のつなげ方 | エピソードの中身(他人の体験) |
| 段落ごとの字数配分の感覚 | 「〇〇先生の研究」など固有名詞部分 |
| 抽象的な関心を学問に接続する言い回しの型 | 結論の文章そのもの |
| 大学固有の情報と自分の関心を結びつける構造 | 数字・実績(自分が持っていないもの) |
以下の5本の例文は、いずれも骨子(400字前後)にとどめている。実際に書くときは、エピソードと大学固有の情報を必ず自分のものに置き換えてほしい。5系統それぞれの出発点となる体験の方向性を先に一覧にしておく。
| 学部系統 | 起点となる体験の方向性 | 関連記事 |
|---|---|---|
| 経済学部系統 | 身近な経済現象(商店・地域経済など)への気づき | 経済学部の小論文 |
| 法学部系統 | ルール・制度への疑問(校則・身近な規則) | 法学部の小論文 |
| 理工学部系統 | 自然現象・データへの素朴な観察 | 理系学部の小論文 |
| 看護医療系統 | 家族・自身・周囲の医療体験の観察 | 看護学部の小論文の書き方 |
| 教育学部系統 | 教える・支援する側に立った体験 | 教育学部の小論文 |
経済学部系統の例文骨子(400字)
テーマ:地域経済の縮小
高校2年の夏、地元の商店街で祖父が営んでいた個人商店が閉店した。理由を尋ねると「後継者がいないだけでなく、近隣に大型店ができて客足が分散した」という答えが返ってきた。この経験から、地域経済がなぜ縮小するのかという構造に関心を持った。以来、地元自治体が公表する商業統計や、中小企業庁の資料を読み、大型店の出店と地域内消費循環の関係を調べてきた。同時に、統計だけでは見えない「なぜその店を選ぶのか」という消費者心理の面がまだ理解できていないと感じている。貴学経済学部を志望するのは、地域産業論とミクロ経済学の両方を学べるカリキュラムが、この問いに答える手がかりになると考えるからだ。将来は地域経済の実態調査に関わる仕事を通じて、縮小する商店街に代わる仕組みづくりに携わりたい。
良い点:家業という身近な体験から出発し、統計的な裏付けと「まだ分からないこと」の両方を書けている点。経済学部の頻出テーマの扱い方は 経済学部の小論文|経済成長・格差・キャッシュレステーマの書き方 で詳しく整理している。
法学部系統の例文骨子(400字)
テーマ:校則と生徒の権利
高校1年のとき、生徒会でスマートフォンの校内使用に関する校則改定の議論に加わった。「なぜこの校則があるのか」を先生に尋ねても明確な説明が返ってこず、ルールが誰のために、どんな根拠で作られているのかという疑問を持った。それ以降、校則の運用と生徒の自己決定権の関係について書かれた新書や、他校の校則見直しの事例を調べてきた。調べる中で、校則の見直しには生徒側の主張だけでなく、学校側の管理責任という別の論点があることも分かってきた。貴学法学部を志望するのは、憲法上の人権論と、実際の制度運用を橋渡しして考えるゼミの存在が、この問いを深めるのに適していると感じるからだ。将来は、身近な規則やルールの妥当性を検証する仕事に関わりたい。
良い点:規則を変えたい側の主張だけでなく「学校側の管理責任」という対立する論点にも触れている点。一方的な正義感で終わっていない。法学部特有の視点は 法学部の小論文|条文操作と利益衡量で書く合格答案 で解説している。
理工学部系統の例文骨子(400字)
テーマ:気象データと防災
中学の自由研究で、自宅近くの河川の水位データを1年間記録した。夏の集中豪雨の日に水位が急上昇する様子を数値で追ったとき、天気予報の「注意報」という言葉の裏にどれほどの変化が起きているのかを実感した。高校では気象庁の公開データを使い、降水量と河川水位の相関を簡易的に分析するようになった。その過程で、自分の分析手法がまだ単純な相関にとどまっており、地形要因を考慮できていないという限界にも気づいた。貴学理工学部を志望するのは、水文学と数値シミュレーションの両方を学べる環境が、この限界を超える手段になると考えるからだ。将来はデータに基づく防災情報の設計に関わる仕事に就きたい。
良い点:自由研究という地味な体験を「データから現象を読み解く」という一貫した軸で語り、自分の分析の限界にも触れている点。理工系の頻出テーマは 理系学部の小論文|科学的思考とデータの扱い方 にまとめている。
看護医療系統の例文骨子(400字)
テーマ:在宅医療と家族の負担
祖母が在宅で介護を受けていた1年間、訪問看護師が来る日と来ない日で家族の疲労の度合いが大きく違うことに気づいた。看護師が担っているのは医療的なケアだけでなく、家族の不安を聞き取り、負担を見える化する役割でもあると感じた。この経験から、在宅医療における看護師の役割について書かれた資料や、地域包括ケアシステムに関する自治体の報告書を読むようになった。一方で、自分が実際に感じたのはあくまで一家族の体験であり、地域差や制度差についてはまだ理解が浅いとも自覚している。貴学看護学部を志望するのは、在宅看護学と地域看護学を体系的に学べる点が、この理解の浅さを埋める道になると考えるからだ。将来は地域の在宅医療を支える看護師として働きたい。
良い点:家族の医療体験を悲劇的に強調するのではなく、看護師の役割という観察に落とし込んでいる点。看護・医療系の書き方は 看護学部の小論文の書き方|頻出テーマと合格する構成 で詳しく扱っている。
教育学部系統の例文骨子(400字)
テーマ:特別支援教育と通常学級の連携
高校の文化祭準備で、特別支援学級の生徒と合同で展示物を作る機会があった。最初はどう接すればよいか戸惑ったが、担当の先生が「役割を細かく分けて、得意なことから任せる」工夫をしているのを見て、指導の設計次第で参加のしやすさが大きく変わることを知った。それ以降、特別支援教育に関する書籍や、通常学級とのインクルーシブ教育の事例を調べてきた。調べるほど、制度としての仕組みと、現場の先生一人ひとりの工夫のどちらが欠けても成り立たないことが分かってきた。貴学教育学部を志望するのは、特別支援教育と学級経営の両方を学べるカリキュラムが、この両輪を理解する助けになると考えるからだ。将来は、通常学級と特別支援学級の連携を推進する教員になりたい。
良い点:役割分担という具体的な工夫を観察の起点にし、制度と現場実践の両方に目を向けている点。教育学部の頻出テーマは 教育学部の小論文|頻出テーマと合格する構成の作り方 で確認できる。
5本に共通する「良い点」
5つの骨子には、学部系統が違っても共通する構造がある。
- 体験は派手な実績ではなく、身近な観察から始まっている
- 「調べたこと」と「まだ分かっていないこと」の両方が書かれている
- 大学固有の情報(カリキュラム名・学問領域の組み合わせ)と自分の問いが結びついている
- 卒業後の展望が、現実的な射程にとどまっている
- 一文一文が、他の大学に出しても意味が通らないレベルまで具体化されている
最後の点が特に重要だ。「貴学」の部分を別の大学名に入れ替えても違和感なく通ってしまう文章は、必然性が弱いと判断されやすい。
丸写しがバレる3つの理由
例文やネット上の合格例文集をそのまま使うと、思っている以上に高い確率で見抜かれる。理由は3つある。
理由1:大学は過去の頻出パターンを知っている
同じ学部を受ける受験生は、似た参考書・似た例文集・似た塾のテンプレートに触れている。面接官・入試担当者は毎年大量の志望理由書を読んでおり、「よく見る言い回し」「よく見る構成」への感度が高い。借り物の表現は、書いた本人が思っている以上に浮いて見える。
理由2:AIによる文章類似度チェック
提出書類に対して文章の類似度をチェックする仕組みを取り入れる動きが入試の現場でもあると指摘されている。ネット上に公開されている例文をほぼそのまま使うと、既存の文章との一致率が高く出るリスクがある。全体の構成を参考にするのはよいが、文章そのものの流用は避けたほうがよい。
理由3:面接で崩れる
志望理由書は面接の質問の起点になる。「ここに書いてある〇〇について詳しく教えてください」と聞かれたとき、自分の体験でなければ具体的に答えられない。借り物の志望理由書は、書類選考を通過しても面接で一貫性が崩れ、そこで評価を落とす受験生が毎年一定数いる。
書き上げた志望理由書に借り物っぽさが残っていないか不安なときは、第三者の目で確認するとよい。lonovaの 志望理由書のAI添削 は、無料登録すれば使える機能で、志望動機・大学適合・具体性・将来像・文章力の観点からスコアと改善点が返ってくる。ゼロから構想を練りたい段階では、チャットで壁打ちしながら磨ける 志望理由書コーチ(サブスク限定)も用意している。
よくある質問
例文をそのまま少し変えて使うのは大丈夫ですか
避けたほうがよい。単語や固有名詞だけを入れ替える程度の使い方は、構成も表現もほぼ同じままになりやすく、丸写しに近い扱いを受けるリスクがある。学ぶべきは構成の型であって、文章そのものではない。
派手な体験がないと良い志望理由書は書けませんか
書ける。この記事で挙げた5本の骨子も、留学や受賞歴のような特別な実績ではなく、家族・部活動・文化祭といった身近な体験から始まっている。重要なのは体験の派手さではなく、そこからどんな問いに至ったかだ。
学部系統が記事の5つに当てはまらない場合はどうすればいいですか
構成の型自体は学部を問わず応用できる。過去の体験、現在の関心・調査、大学固有の情報との接続、卒業後の展望という骨格を、自分の志望学部に置き換えて考えてみてほしい。オープンキャンパスでの一次体験を材料にする方法は オープンキャンパスは「志望理由書の材料集め」で行く にまとめている。
400字の骨子を800字に増やすにはどうすればいいですか
各段落のエピソードや調査内容を掘り下げて具体化するのが基本になる。800字での段落配分の目安は 志望理由書の書き方 の構成テンプレを参照してほしい。
まとめ
この記事の要点を整理する。
- 例文は「構成の型」を学ぶために使い、文章そのものは借りない
- 5系統(経済・法・理工・看護医療・教育)とも、身近な体験→調査・関心→大学固有の情報→展望という骨格は共通
- 丸写しは、大学側の経験則・類似度チェック・面接での深掘りの3方向から見抜かれやすい
- 「まだ分かっていないこと」を1文入れると、傲慢さが消えて説得力が上がる
例文はあくまで出発点であり、最終的に評価されるのは自分自身の体験と言葉だ。骨子を参考にしながら、自分だけの志望理由書に組み立て直してほしい。


