「小論文を書こうとすると、具体例が浮かばない」――この悩みは受験生から本当によく聞く。型を覚えて、構成を立てて、書き始めてはみるものの、本論で具体例を出す段で手が止まる。結果、抽象論で字数を埋めて、採点で「具体性」軸が60点台で停滞する。
この記事では、小論文の具体例の出し方を整理する。採点軸「具体性」が何を見ているか、4種類の素材それぞれの使い方、抽象論に逃げないコツを解説する。
筆者は AI 小論文添削サービス lonova 編集部。具体性の低さが原因で点を落とす答案を多数見てきた経験から、具体例を強くする方法をまとめた。
具体例が点数を決める理由
採点者の立場で考えると、具体例の重要性が見えてくる。
抽象論だけの答案は「誰が書いても同じ」になる。「多様性が大切」「コミュニケーションが重要」「思いやりが必要」――こういう一般論は、受験生10万人が同じことを書ける。採点者が「この受験生は他とどこが違うか」を判断する材料がない。
具体例は答案に固有性を与える場所だ。同じ「多様性が大切」という主張でも、「私が中学のとき、外国にルーツを持つ転校生と接したとき〜」と続けば、その受験生固有の経験から論じている。これが点を取る答案の構造だ。
lonova の AI 採点で見ると、具体性軸が80点を超える答案には必ず具体例がある。70点以下の答案は大体抽象論で押し切っている。具体性は点数の伸びしろを決める。
採点軸「具体性」が見ているもの
採点軸の「具体性」は何を見ているか整理する。
1. 主張を支える具体例があるか
「〜が大切」と書いたら、その主張を支える具体例が続いているか。具体例なしで価値判断だけ並べる答案は、論証として弱い。
2. 具体例が主張と対応しているか
具体例があっても、主張と噛み合っていなければ意味がない。「論理性が大切」と書きながら、関係ない具体例を出していないか。
3. 具体例の解像度が高いか
「いろいろな国の人と話した」より「ベトナム出身のクラスメイトと、彼の母国の食文化について話した」の方が解像度が高い。固有名詞・数字・時系列が入ると解像度が上がる。
4. 具体例が一般論への橋渡しになっているか
具体例で終わるのではなく、「この経験から〜という一般論が言える」と社会論に接続できているか。個人の体験を社会的視点に広げる力が問われる。
具体例の4つの種類
小論文で使える具体例は4種類ある。
| 種類 | 内容 | 向くテーマ |
|---|---|---|
| 自分の体験 | 学校・家庭・地域での経験 | 教育・社会・人間関係 |
| 統計・データ | 政府統計、調査結果 | 経済・社会課題 |
| 時事ニュース | 直近の事件・出来事 | 法・政治・社会 |
| 学問・歴史 | 教科書知識、歴史的事実 | 哲学・人文・社会科学 |
このうち「自分の体験」が最も独自性を出しやすく、「統計・データ」が最も説得力を持つ。両方を1つの答案に組み込めると強い。
自分の体験を素材にする
自分の体験を具体例として使うコツ。
コツ1:日常の小さい出来事を社会論に接続する
「友達との会話」「家族との議論」「アルバイト経験」「部活動」「ボランティア」「旅行」――どれも社会論に接続できる。
例:「家庭で外国人観光客に道を教えた経験」→「日本の多文化対応の課題」 例:「部活動で意見が対立した経験」→「組織における意思決定の難しさ」
コツ2:1つのエピソードを深掘りする
複数のエピソードを並べるより、1つを深く掘り下げる方が説得力が出る。「いつ・どこで・誰と・何があって・どう感じたか」を1段落で書く。
コツ3:感情の動きを入れる
体験を語るとき、自分がどう感じたかを1文添える。「驚いた」「違和感を持った」「考え方が変わった」など。これがあると体験が「生きた素材」になる。
コツ4:体験から一般論への橋渡し
体験を語って終わらない。「この経験は〜という一般論を示唆する」と社会論に広げる。これができないと「体験談で終わる答案」になる。
統計・データを素材にする
統計やデータを具体例として使うコツ。
コツ1:信頼できる出典から引用
政府統計(総務省、厚生労働省、文部科学省)、国際機関(OECD、UN、WHO)、大手新聞社の世論調査などが信頼できる。ネット記事や SNS の情報は出典として弱い。
コツ2:完璧な数字は不要、範囲で書ける
「2022年の出生率は1.26」のように厳密でなくていい。「近年の出生率は1.3前後で低下傾向」のように範囲で書ける。確信のない数字を断定的に書くより、範囲で書く方が安全だ。
コツ3:比較を添える
数字を単独で出すより、比較を添えると意味が伝わる。「他国比」「過去比」「業種比」のいずれかを1つ添える。
コツ4:数字の意味を解釈する
数字を引用するだけでは弱い。「この数字は〜を示唆する」と意味を解釈する1文を必ず添える。
時事ニュースを素材にする
時事ニュースを具体例として使うコツ。
コツ1:「最近のニュース」より「具体的な事例」
「最近、SDGsが話題になっている」では弱い。「2024年に〜という事案で〜が起きた」のように、具体的な事例を引用する。
コツ2:直近のニュースに偏らない
入試本番の数日前のニュースで論じると、採点者と認識がズレる可能性がある。半年〜3年前の事例の方が「論じる素材」として安定する。
コツ3:誰でも知っている事例を選ぶ
マニアックな事例より、誰でも知っている事例を使う。コロナ禍、東日本大震災、SNS炎上、AIの普及など。採点者の前提知識に乗れる事例が伝わりやすい。
コツ4:批判的に扱う
ニュースを単に紹介するのではなく、「この事例から〜という構造的問題が見える」と批判的に扱う。
学問・歴史を素材にする
教科書知識や歴史的事実を具体例として使うコツ。
コツ1:高校教科書レベルで十分
専門書から引用する必要はない。高校の歴史・政治経済・倫理の教科書レベルの知識で書ける。
コツ2:歴史を現代に接続する
過去の事例を引用するときは、それを現代の議論に接続する。「江戸時代の身分制度は〜という構造を持っていた。これは現代の〜にも通じる」のように。
コツ3:哲学者・思想家の引用は慎重に
「ロックは〜と言った」「カントは〜と論じた」のような引用は、誤用すると印象が悪い。確信のある引用だけ使う。
コツ4:複数の学問領域を組み合わせる
歴史と現代政治、経済と倫理、文学と社会など、複数の領域を組み合わせると論述に深みが出る。
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具体例でやりがちなNG
具体例の使い方で減点される答案には共通パターンがある。
- 抽象論で終わる:「多様性が大切」「思いやりが必要」だけ
- 具体例が主張と噛み合わない:的外れな例を出している
- 解像度が低い:「いろいろな経験」「様々な人」では何も伝わらない
- 具体例の羅列で論証なし:3-4個並べるだけで分析がない
- 嘘の具体例:捏造したエピソードは採点者に見破られる
- 時事ニュースの表面引用:「コロナ禍は大変だった」程度で済ます
- マニアックな引用:採点者が知らない事例を引用
これらは AI 採点で「具体性」軸の低スコアとして現れる。
具体例を AI 採点で確認する
具体例の質は自己採点しにくい。書いている本人は「具体的に書いた」と感じても、客観的には抽象論にとどまっているケースが多い。
AI 採点を使うと、抽象語の使用頻度、具体例の解像度、論述との接続が軸別スコアで可視化される。「具体性」軸が70点を切る答案は、ほぼ確実に具体例の質に問題がある。
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まとめ
小論文の具体例の出し方の要点をまとめる。
- 具体例は答案に固有性を与え、点数の伸びしろを決める
- 採点軸「具体性」は「主張との対応・解像度・一般論への接続」を見る
- 具体例の素材は4種類(体験・データ・時事・学問)
- 自分の体験を社会論に接続するのが最も独自性が出る
- データは「信頼できる出典・範囲で OK・比較を添える・意味を解釈」がコツ
- 時事は直近すぎず、誰でも知っている事例を批判的に扱う
- 「抽象論で終わる」「解像度が低い」「主張と噛み合わない」が NG パターン
具体例が書けないのは「素材がない」のではなく「素材の選び方・接続の仕方を知らない」だけだ。
よくある質問
体験談を書きたいが、特別な経験がない場合は?
特別な経験は不要。日常の小さい出来事で十分。「家庭での会話」「学校での出来事」「アルバイト経験」「部活動」「友達との議論」――これらすべて社会論に接続できる素材だ。「特別な経験」より「自分なりの気付き」がある体験を選ぶ。
統計データを覚える時間がない場合は?
完璧に覚える必要はない。「2020年代は◯%程度」のように範囲で書ければ十分。新聞・ニュースを定期的に読んで、感覚を掴んでおくのが現実的だ。
具体例を1つの答案にいくつ入れるべきですか?
800字なら2-3個、1200字なら3-5個が目安。多すぎると1つ1つの掘り下げが浅くなる。少なすぎると論証が弱くなる。「メインの具体例1つを深く掘り下げ、補助の具体例を1-2個添える」がバランス良い構造だ。





